高齢化が進む現代では、移動美容室の需要が大変高まっているのをご存じでしょうか?
移動美容室は、身体が不自由な人や近くに美容室がない人など、美容室に通うことが困難な人にサービスを提供します。
この記事では、移動美容室の開業を考えている方向けに、開業に必要な許可や手順などを紹介します。
実際に全国で活動をしている移動美容室もご紹介するので、ぜひ参考にご覧ください。
近年需要が高まる移動美容室とは
移動美容室とは美容室に通うことが困難な方に向けた移動店舗型のサービスです。
通常は美容室の店舗にお客様が足を運ぶのが一般的ですが、2016年の美容法の改正に伴って移動美容室を開業しやすくなり、最近注目されているようになりました。
高齢化に伴い需要が高まっている
人口の高齢化により、美容室に行きたくても通えない人が増加しているのをご存じでしょうか。
車いすや寝たきり生活で美容室にいけない人や、そもそも住んでいる地域に美容室がなく遠方の美容室に通うのが困難な人もいます。
最近は都心から離れた地域に住んでいる方に向けて移動スーパーなどのサービスが増えており、同様の移動店舗型サービスは増加傾向にあります。
美容法の改正により移動美容室が開設しやすくなった
以前より移動美容、訪問美容というサービスは存在しましたが、実際に利用できるのは美容法で定められた人のみでした。
なぜなら、基本的に美容師は「美容室」以外でのサービス提供は法律で規制されていたからです。
しかし2016年の美容法改正に伴い、移動美容室を利用できる人の規定が緩和されたのです。
2016年以前 | 2016年以降 | |
高齢者や病気による寝たきりの人 | 〇 | 〇 |
結婚式などに伴う出張ヘアメイク | 〇 | 〇 |
美容室の無い過疎地に在住の人 | 〇 | 〇 |
介護施設などの入居者 | 〇 | 〇 |
テレビ出演に伴うメイク | 〇 | 〇 |
自宅で介護をしている人 | × | 〇 |
自宅で乳幼児の育児をしている人 | × | 〇 |
参考:厚生労働省
地域によっては移動店舗車(移動美容車)が「美容所」として許可されると、固定店舗と同じように開業が可能です。
ただし、自治体ごとに美容所開設の衛生管理などの基準を定めた条例があり、自治体によって基準が厳しい場合もあるようです。
その場合は車両による美容所開設が実質不可能ということもあるようなので、事前に開業する自治体へ確認を行いましょう。
移動美容室を開業するメリット
移動美容室を開業するメリットは以下4つとなります。
開業資金が安い
家賃が掛からない
自分のペースで仕事ができる
競合が少ない
開業資金が安い
移動美容室は、固定店舗型の美容室よりも開業資金を抑えられるのが最大のメリットです。
固定の店舗であれば1,000~1,200万円ほどかかるのに対して、移動美容室は中古であれば300~500万円ほどに抑えられます。
さらに設備を追加したとしても、固定の店舗よりは大幅に安く開業ができるでしょう。
家賃が掛からない
固定の店舗だと毎月家賃がかかるのに対し、移動美容室であれば家賃はかからず、駐車場代がかかる程度です。
継続して運営していくのであれば、固定費を抑えられるのは大変大きいでしょう。
自分のペースで仕事ができる
移動美容室であれば予約のない時間帯を自分の時間に充てられます。
例えば、介護施設などによる訪問美容であれば午前中指定の予約が多いので、パート枠でしか働けない子育てママの美容師でも活躍できる点が魅力です。
また、通常の店舗型の美容室であれば予約の合間に無駄な空き時間が発生することもありますが、介護施設などの場合は一度に何名か連続で施術を行うので、無駄な時間が発生することなく売り上げが発生するのもメリットでしょう。
競合が少ない
店舗型の美容室に対し、現在はまだまだ移動美容室は少ないのが現状です。
そのため、競合が少なく差別化しやすいのも利点と言えるでしょう。
特に、高齢者の人口が多く美容室がない地域であれば多くの集客も見込めます。
移動美容室を開業するデメリット
続いて移動美容室を開業するデメリットは以下4つとなります。
- 駐車場の確保が難しい
- 地域によって許可基準が異なる
- 事故のリスクがある
- 車両メンテナンスが必要
駐車場の確保が難しい
移動美容車の中で施術をする場合、移動美容車は大型の車両となる可能性があります。
すると、実際に訪問する際に、大型の車両を駐車するスペースがなければ営業を行なえません。
郊外エリアで開業する場合は、訪問前に駐車場所の許可取りが必要となるので注意が必要です。
なお、過疎地による営業であれば、駐車スペースは比較的確保しやすいでしょう。
地域によって許可基準が異なる
前述した通り、地域によって移動美容室開業の許可基準が異なります。
ある地域では業務の実施や衛生の保持に支障がない十分な広さがあれば許可されますが、別の地域では固定の店舗と同様の広さが条件の場合もあり、実質車両では実現できません。
まずは開業したい地域で移動美容室の開業が可能かを確認しましょう。
事故のリスクがある
車の運転が必須となる移動美容室での営業は、事故にも十分に気をつける必要があります。
特に移動店舗車は乗用車よりも大きいため、慣れない運転環境にはより注意が必要です。
疲労を感じる場合は、必ず休憩をとりながら安全第一で運転を心がけましょう。
車両メンテナンスが必要
移動店舗車を安全に利用するためには、定期的な車両のメンテナンスが必要です。
定期点検やオイル交換、車検など必要なメンテナンスは必ず実施して営業を行いましょう。
移動店舗車を取り扱う業者の中には、アフターサポートとしてメンテナンスに対応している場合があるため、事前に確認しておくと安心です。
移動美容室の開業には保健所の許可が必要
移動店舗車で美容室を開業するには、保健所の許可が必要です。
自治体が定める一定の基準を満たしたうえで、開設の届出をしましょう。
ただし、自治体によって定める基準が異なるため、移動店舗車を購入する前に保健所へ確認することをおすすめします。
例として、盛岡市が定める構造基準の一部をご覧ください。
- 床・腰板:コンクリート、タイル、リノリュームまたは板などの不浸透性材料を使用すること。
- 洗い場:流水装置とすること。
- 汚物箱・毛髪箱:ふた付きの汚物箱と毛髪箱をそれぞれ備えること。
- 採光・照明:作業面の照度を100ルクス以上(300ルクス以上が望ましい)とすること。
- 換気:空気中1リットル中の炭酸ガスの量を5立方センチメートル以下に保つこと。
- 待合所:作業場と区分した客の待合所を設けること。
- ただし、結髪のみを行う美容所を除く。
出典:https://www.city.morioka.iwate.jp/
移動美容室の開業に必要な資格
移動美容室を開業するのに必要な資格は以下となります。
- 必須:美容師免許
- 必須:管理美容師
- 必須:自動車運転免許
- 任意:福祉理美容師
移動美容室では、固定店舗と同じく美容師免許のほか管理美容師資格、移動美容車の種類に応じた運転免許が必須です。
開業までに使用する車種の運転免許を取得するか、もしくはドライバースタッフを雇用して運転してもらう必要があります。
また、高齢者や身体が不自由な方に対してサービスを提供する場合は、「福祉理美容師」の資格取得も検討しましょう。
福祉理美容師は国家資格ではありませんが、高齢者や身体が不自由な方に対する介助知識を習得できます。
移動美容室を開業するまでの流れ
ここからは、実際に移動美容室を開業するまでの流れについて紹介します。
- 営業する地域を決める
- 移動店舗車を製作する
- 開業の手続きを行う
- 必要な備品を購入する
- サロンの宣伝広告を行う
1.営業する地域を決める
まずは移動美容室を営業する地域を決めましょう。
開業するには、営業する地域の保健所に届出をする必要があります。
たとえば、複数の市や町で営業を行う場合、それぞれの保健所に届出をしなければなりません。
また、地域によって、移動店舗車の申請基準や施術できるお客様が異なる場合もあります。
届出の前に、営業を計画している地域の保健所への確認をおすすめします。
2.移動店舗車を製作する
営業する地域を決めたら、移動店舗車の製作をします。
移動店舗車の設備や床面積の基準は各自治体で異なるため、必ず営業地域を決定してから移動店舗車の製作に取り掛かってください。
固定店舗の美容室と同様に、外観やインテリアはおしゃれにするよう心がけましょう。
幅広い年代に受け入れられるデザインを採用することで、誰でも気軽に利用しやすい雰囲気を作れます。
営業許可などの開業手続きを行う
移動店舗車の製作が完了し、開業の準備が整ったら必要な申請をしましょう。
まずは活動を予定している地域の保健所に、開設の許可申請を行います。
事前に必要書類を確認することで、スムーズに手続きを進められます。
参考までに、盛岡市で開業に必要な書類をまとめました。
【理容所開設届】
- 開設検査申請書
- 構造及び設備の概要
- 理容師免許証(写しおよび原本)
- 【従事する理容師が2人以上の場合】管理理容師講習会修了証書(写しおよび原本)
- 健康診断書(結核、伝染性皮膚疾患などについて)
- 店舗の平面図
- 店舗周辺案内地図
- 【開設者が法人の場合】登記事項証明書(写しおよび原本)
- 【開設者が外国人の場合】住民票の写し(国籍などを記載したもの)
出典:https://www.city.morioka.iwate.jp/
【美容所開設届】
- 開設検査申請書
- 構造及び設備の概要
- 美容師免許証(写しおよび原本)
- 【従事する理容師が2人以上の場合】管理美容師講習会修了証書(写しおよび原本)
- 健康診断書(結核、伝染性皮膚疾患などについて)
- 店舗の平面図
- 店舗周辺案内地図
- 【開設者が法人の場合】登記事項証明書(写しおよび原本)
- 【開設者が外国人の場合】住民票の写し(国籍などを記載したもの)
出典:https://www.city.morioka.iwate.jp/
また、開業するにあたり、管轄の税務署へ開業届を提出する必要があります。
開業届は、開業後1か月以内に税務署へ提出する必要があるため、焦らないように余裕をもって手続きをしましょう。
必要な備品を購入する
移動美容室を営業するには、開業までに必要な備品を揃える必要があります。
施術に必要な備品は、一般の美容室とほぼ同じと考えてよいでしょう。
【施術に必要なもの】
- シャンプー台
- ミラー
- チェア
- ドライヤー
- タオル
- カットクロス
- シャンプークロス
- カラー剤
- パーマ剤
- シャンプー・トリートメント
- スタイリング剤 など
併せて、車の運転に欠かせない備品もあるため、忘れずに準備をしましょう。
【車関係の備品】
- ドライブレコーダー
- 三角停止版(車の故障の際に必要)
- ジャンプスターター(バッテリー上がり対策)
- スタッドレスタイヤ
SNSやホームページで告知・集客を行う
特定の場所に店舗をもたず、さまざまな場所で営業する移動美容室は、宣伝広告に工夫が必要です。
若い年齢層のお客様を獲得したい場合は、SNSの利用が有効でしょう。
車内や施術の様子をSNSに掲載することで、若い年齢層の人たちの目に留まりやすくなります。
高齢のお客様向けにサービスを提供する場合は、SNSよりもチラシのポスティングが効果的です。
必要であればホームページも作成するとよいでしょう。
移動美容室はまだ馴染みがないサービスであるため、お客様としては利用に不安を感じるかもしれません。
積極的な宣伝広告を心がけ、多くの人が利用してみたくなるよう工夫しましょう。
移動美容室に使用される車両は?
移動美容室にはどのような車両が使用されるのでしょうか。
ここからは、移動美容室に適した車両を紹介します。
1.5t以上のトラックが一般的
一般的に移動美容室には、1.5〜3tトラックをベースとした移動店舗車が使用されています。
1.5t未満の場合だと、作業スペースとなる荷室が狭いため、快適なサービスの提供が難しいためです。
広いスペースを確保するためには、1.5t以上のトラックを準備しましょう。
ハイエースやキャンピングカーは?
移動美容室に使用する移動店舗車は、自治体が定める基準を満たしている必要があります。
基準を満たしているのであれば、ハイエースやキャンピングカーを使用しても問題ありません。
ただし、1.5t以上のトラックと比べると、施術スペースや待合スペースが狭いため、使用の際は気をつけましょう。
訪問美容室なら軽自動車でも◎
軽自動車で必要な道具や設備を運搬し、訪問先の自宅や施設に出張して施術を行う「訪問美容」という方法もあります。
その場合は車両内で施術する必要がないので、移動するための軽自動車でも問題ありません。
移動店舗車の価格はいくらが相場?
車両の種類や設備によって異なりますが、移動店舗車の価格相場は一般的に400〜1,500万円と幅広い傾向にあります。
安い中古車の場合で500万円程度、広いスペースや設備が整った3.5tトラックの場合だと1,000万円を超えるでしょう。
高いと感じるかもしれませんが、固定店舗でサロンをオープンする場合は1,000万円以上かかるとされています。
また、固定店舗の場合は家賃が発生するため、移動店舗車は事業にかかる費用を比較的抑えられます。
実際に活動中の出張・移動美容室を紹介
ここからは、実際に活動をしている出張・移動美容室を紹介します。
- 移動美容室そよ風
- 移動理美容室あみ
- ふれ愛サロンひまわり
- 出張・移動美容室たんぽぽ
- サロンカーエイティ
移動美容室そよ風
移動美容室そよ風は、愛知県一宮市の会社で、2003年に移動美容室事業をスタートしました。
150以上の病院や介護・福祉施設を対象に訪問し、カットだけでなくシャンプー、毛染め、パーマ、顔そりなどのサービスを行なっています。
ヘルパーの資格をもったスタッフも在籍しているため、重度の障害や寝たきりの状態の方でも施術が可能です。
移動理美容室あみ
移動裏美容室あみは、大阪府大阪市に拠点を置く移動理美容室です。
病院や福祉施設、老人ホーム、障害者施設などを定期的に訪問し、理美容室に行くことが困難な人を対象にサービスを行なっています。
メニューにはカットや顔そり、シャンプーのほか、パーマやカラーなどがあり、一般的な理美容室と同様のサービスが受けられます。
ふれ愛サロンひまわり
ふれ愛サロンひまわりは、岐阜県各務原市に本社を置く移動・出張理美容室で、介護施設や医療施設等へ理美容サービスを提供しています。
移動理美容車「ふれ愛サロンひまわり号」には、高さを調節できるシャンプー台や角度を調節できる鏡など、便利な設備が搭載されています。
また、乗り降り専用の電動リフトも搭載しているため、車椅子の方でも負担なく利用が可能です。
施術中の車内にはBGMが流れ、リラックスした雰囲気でサービスを受けることができます。
出張・移動美容室たんぽぽ
出張・移動美容室たんぽぽは、株式会社林商店が運営する移動美容室サービスです。
病院や高齢者福祉施設などと契約をしており、定期的に巡回してサービスを提供しています。
メニューには、カット+ブローや毛染め、シャンプー、パーマフルサービスなどがあるほか、寝たきりの方を対象としたベッドサイドでのカットサービスもあります。
車内はバリアフリー構造で、車椅子のままサービスを受けられるため、身体が不自由な方でも安心して利用できます。
サロンカーエイティ
引用:https://saloncar80.webnode.jp/
サロンカーエイティは、石川県かほく市を拠点として活動する移動美容室です。
近くに美容室がない人や、小さい子どもがいてなかなか美容室にいけない人などにサービスを提供したいという思いで活動を始められました。
カットやパーマ、カラーはもちろん、ヘアマニキュアのサービスや、学生カットも行なっています。
出張料は、石川県かほく市から30km圏内で無料、30km圏外で一律2,500円(3名以上で無料)です。
移動美容室の車両はMYキッチンカーが製作します!
移動美容室の車両の製作は、MYキッチンカーにお任せください!
MYキッチンカーはフードトラックをはじめ、多種多様な移動販売車や移動店舗車の製作を手がけてきました。
豊富な経験・実績をもとに、お客様のご要望やご予算に応じて最適な車両をご提案いたします。
お見積りや資料請求は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください!
まとめ
移動美容室は、さまざまな事情で美容室に行けない人にとって、とても貴重なサービスです。
一般的な美容師とは違う働き方をしたい人や、困っている人の役に立つ仕事がしたい人は、本記事を参考に移動美容室の開業を検討してみてはいかがでしょうか?