キッチンカーを開業するうえで必ず「保健所の営業許可」と「道路使用許可」を取得しなければいけません。
営業許可の審査では、地域によって細かなチェック項目が設けられていることも多く、複雑な手続きや審査項目に困惑したという声をよく耳にします。
スムーズにキッチンカーの営業を開始するためには、事前に条件や手続きの流れを把握しておくことが大切です。。
この記事では、審査項目や営業許可を取得す取るためのポイントを詳しく解説、手続きの流れまでわかりやすく解説しています。
ぜひ最後までお読みください。
キッチンカー開業に必須!保健所の営業許可とは
キッチンカーで飲食物を販売し営業するためには、保健所が定めた基準・条件をクリアして営業許可証を取得する必要があります。
保健所の営業許可取得の流れを確認しておきましょう。
営業許可は出店する地域ごとに取得する
キッチンカーの営業許可は全国共通ではなく、出店する地域ごとに取得しなければいけません。
出店する地域ごとに管轄の保健所で申請・取得する必要があるのです。
たとえば、東京都で許可を取得したからといって神奈川県でも営業できる、というわけではなく、神奈川県でも営業する場合は改めて神奈川県にも営業許可を申請・取得しておく必要があります。
営業許可の条件は保健所によって異なる
営業許可の基準・条件は各保健所で異なり、同じ保健所内でも担当者によって変わることもあるため、事前に管轄の保健所に問い合わせて条件を確認するようにしましょう。
保健所が提示してくる条件をあらかじめ確認しておくことで、キッチンカーの仕様を誤ることなくカスタマイズできます。
更新期間・取得費用(手数料)
営業許可証の有効期限は5年間で、満了日の1ヶ月前には更新手続きを行う必要があります。
営業許可証には複数の種類があり、販売メニューに応じてそれぞれ取得しなければならない場合があるため注意しましょう。(後に詳しく解説します)
1つの許可につき取得費用は15,000円前後ですが、複数の許可を取る場合はそれぞれに取得費用が必要です。
営業許可の種類!メニューによって必要な許可が異なる
営業許可の種類は「食品営業自動車」と「食品移動自動車」に分かれ、さらに、以下のように細かく分類されています。
分類 | 業種 | 内容 |
食品営業自動車(調理営業) | 飲食店営業 | 焼きそば、サンドイッチ、カレー、弁当など アルコール販売OK |
菓子製造業 | ケーキ、パン、クレープなど | |
喫茶店営業 | 紅茶やコーヒーなどの飲料、アイスクリーム、かき氷など アルコール販売NG | |
食品移動自動車(販売業) | 食料品等販売業 | 袋詰めされたパン、パック詰めされたお弁当や惣菜など |
食肉販売業 | 包装された鳥獣の生肉など | |
乳類販売業 | 包装された牛乳、乳飲料など | |
魚介類販売業 | 鮮魚介類で生食用魚介類は、あらかじめ包装されたものに限る |
1つずつ解説していきます。
自動車による移動販売は大きく分けて2つ
移動販売車は「A.食品営業自動車」「B.食品移動自動車」の2種類があります。
A.食品営業自動車 →車内で調理・販売する場合で、生モノは不可となります。
B.食品移動自動車の場合 →すでに加工済みの食品を営業車で販売する場合です。
キッチンカーは主にAに該当します。
さらにキッチンカーの営業許可は3種類に分かれる
「食品営業自動車」に分類されるキッチンカーには、さらに3種類の営業許可があります。
- 飲食店営業
- 菓子製造業
- 喫茶店営業
①飲食店営業
軽食・ランチなどフード系メニューを扱う場合の営業許可です。
アルコール販売も含まれますが、スイーツ販売はここには含まれません。
(例)カレー・オムライス・焼きそば・たこ焼き・サンドイッチ・フランクフルト など
②菓子製造業
スイーツ系メニューを販売する場合の営業許可です。
フード系メニューは含まれません。
(例)クレープ・パン・ケーキ・ワッフル・ドーナツなど
③喫茶店営業
カフェ系ドリンクメニューを扱う場合の営業許可です。
フード系・スイーツ系メニューは扱えず、アルコール販売も不可になります。
(例)コーヒー・ソフトドリンク など
しかし、現在は地域によって喫茶店営業と飲食店営業が統合され、複数の営業許可を取得する必要のない地域もあります。
これまでの業種 | 新設・統廃合 | 新しい業種 |
飲食店営業 | 継続 | (1)飲食店営業 |
喫茶店営業 | 廃止(飲食店営業と統合) | |
菓子製造業 | 継続 | (2)菓子製造業 |
あん類製造業 | 廃止(菓子製造業と統合) | |
アイスクリーム類製造業 | 継続 | (3)アイスクリーム類製造業 |
引用:https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/kenko/1022967/1040223.html
これらも各保健所によって基準が異なるため、自分の販売メニューにどの営業許可が必要なのか、事前にしっかり確認をとっておきましょう。
袋詰めされたパン・梱包された牛乳などを販売する場合
フード系のお店で袋詰めされたパンや牛乳を販売する場合は、食品移動自動車(販売業)の営業許可も必要になります。
たとえば、カレー店でソフトドリンクと袋詰めのパンも販売した場合、飲食店営業許可・喫茶店営業許可・食品移動自動車の3つの許可を取得する必要があります。
キッチンカーの開業に必要な資格や許可について詳しくはこちらの記事をお読みください。
営業許可申請でチェックされる項目
営業許可証を取得するためのチェック項目・基準は、各保健所ごとに異なりますが、一般的に以下のチェック項目・基準が設けられています。
- 運転席と調理場は仕切られているか
- 給水、排水タンクの容量は適切か
- シンクの数は適切か
- 収納スペースの確保、設置は適切か
- 手洗い石鹸の常備、清潔を保てるか
- 換気扇は設置されているか
- 冷蔵庫が設置されているか
- ゴミ箱は設置されているか
- 仕込み場所は確保できているか
これらの審査に通るようにキッチンカーを製作しましょう。
1つずつ詳しく解説していきます。
運転席と調理場の仕切り
営業許可を取得するには、キッチンカーの運転席と調理スペースが完璧に仕切られている必要があります。
これは、食中毒を防ぐためで、バンタイプや人気のクイックデリバリーなどの車種は、運転席と調理スペースが分かれていないため対策が必要です。
荷台部分にキッチンボックスを搭載するトラックタイプの場合、対策の必要はありません。
給水・排水タンク
キッチンカーには十分な容量の給水・排水タンクが必要です。
固定店舗と違って自由に水を供給・排出できないキッチンカーでは、衛生面から給水・排水タンクが必要とされているのです。
どれくらいの容量が必要かは管轄の保健所によって異なり、扱う商品の種類によっても変わってきますので、キッチンカーの改造前に確認しておきましょう。
参考に、東京都の基準を記載しておきます。
食品営業自動車 ・飲食店営業 | ・大量の水を使わない ・食器類は使い捨て ・食品は単一品目 | 40リットル以上 |
・大量の水を使わない ・食器類は使い捨て ・食品は複数品目 | 80リットル以上 | |
・上記以外 | 200リットル以上 | |
食品移動自動車 (販売) | ・一律 | 18リットル以上 |
シンクの数
シンクの数や大きさも各保健所で基準が決められています。
一般的には手洗い専用シンクと調理器具の洗浄用シンクの最低2つの設置が義務付けられますが、3つのシンク設置が必要なところもあるようです。
シンクの大きさも、奥行き・幅・深さまで細かく規定されている場合があります。
保健所の担当者の主観で「小さい」と判断され、改造し直したという話も聞くので、シンクの数と大きさも事前に必ず確認しておきましょう。
収納スペース
食品・調理器具・容器などの収納スペースもチェックされます。
チェックされるポイントは「扉がついているかどうか」、その扉が虫やホコリなどが入らないように隙間なく「密閉できるかどうか」です。
キッチンカーをDIYで自作する場合は、寸法違いで隙間ができないように注意が必要しましょう。
手洗い石鹸
食品を扱う以上、1年を通して発生するノロウイルスやO-157のリスクとは常に隣り合わせです。
清潔な状態を保って食中毒を防ぐために、手洗い石鹸・消毒用アルコールを常備することも求められます。
換気扇
換気扇がないキッチンカーは営業許可をもらうことができません。
ただ単に換気扇を設置するだけでなく、虫が入ってこないように網戸付きの換気扇にするなどの対策も必要です。
キッチンカーは熱がこもりやすく、夏場は特に室内の温度が上がりがちなため、換気扇を設置することは営業許可のためだけでなく、車内の快適性にもつながります。
冷蔵庫
保冷が必要な食材を扱う場合、冷蔵庫(冷凍庫)の設置が義務付けられています。
クーラーボックスと保冷剤で許可がおりる地域もあるようですが、大半の場合は冷蔵庫(冷凍庫)が必要です。
調理台と一緒になった冷蔵庫であれば、スペースをとらず狭い社内にも設置することができます。
また、キッチンカーの走行中も冷蔵庫(冷凍庫)の電源が切れないことを求められる場合があり、その場合は発電設備も用意しなければなりません。
ゴミ箱
ゴミ箱の設置も営業許可の条件の1つです。
蓋つきのものであればOKですが、大きさを指定される場合もあるようです。
仕込み場所
営業許可を取得するうえで重要なのが「仕込み場所の確保」です。
販売するメニューによっては、キッチンカー以外に「仕込み(具材の下準備)をするための施設」を確保しなければ営業許可がおりないケースがあります。
かつ、仕込み場所にも営業許可証の取得が必要です。
仕込みの例としては、下記のようなものがあります。
- 焼きそばに使う肉、キャベツ、人参などの具材を切る
- タコ焼きに使うタコを切る
- クレープ生地を作るために粉と牛乳を混ぜる
このような「切る・混ぜる」といった作業は異物混入・食中毒のリスクを伴うため、屋内での作業を義務付ける保健所が多く、自宅での仕込みは多くの保健所で禁止されています。
コストを抑えて仕込み場所を確保する方法としては、シェアキッチンを借りる・知り合いの飲食店を間借りするなどが考えられます。
ただ、どの調理工程を仕込みと判断するかは各保健所によって異なるため、事前に保健所に問い合わせておきましょう。
保健所の営業許可を取得(手続き)する流れ
手続きをスムーズに進めるために、営業許可を取得する流れを把握しておきましょう。
①事前相談
キッチンカーの開業を決めたら、必ず事前に保健所に相談しましょう。
あらかじめ保健所に設備面や条件に関するアドバイスをもらうことで、手続きがスムーズになります。
ここでの注意点は「販売メニュー」「営業を希望する地域」を決めてから保健所に相談することです。
メニューや地域が決まっていなければ、保健所もアドバイスのしようがないからです。
申請書をダウンロードできる保健所の場合は、申請書を持って相談しに行くと良いでしょう。
②申込書の提出
保健所に事前相談して条件を確認したら、必要書類を記入して提出します。
先に書類の提出を求められる場合もあれば、キッチンカーの検査日にまとめて提出する場合もあるため、提出のタイミングは保健所の指示に従いましょう。
一般的に以下の書類の提出が必要です。
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 営業の大要
- 仕込み場所の営業許可書の写し
- 仕込み場所の水質検査証明書
- キッチンカーの車庫証明・地図
- 食品衛生責任者の資格証明書
- 車検証のコピー
- 排便検査の成績書
書類提出時には許可申請手数料の支払いが必要ですので、認印も用意して行きましょう。
③キッチンカー検査日の決定
申請に必要な書類を揃え、キッチンカーも不備なく準備できたら検査日を決定しましょう。
キッチンカーの検査は保健所に車両を持ち込んで実施されます。
連絡したその日に検査してもらえるものではないので、事前に担当者と日程を調整する必要があります。
④キッチンカーの検査実施
保健所の担当者による検査では、キッチンカーの設備に不備がないかチェックしてもらいます。
石鹸・消毒液の設置を忘れがちなので、注意が必要です。
不備があれば不合格となり、再検査お時間と手間が余計にかかるので一回で合格できるように、保健所が提示した条件通りにキッチンカーを製作しましょう。
もし不備があったとしても、再検査を受けて合格できれば問題ありません。
⑤営業許可書交付
晴れて検査に合格すれば、どれだけ長くても3週間以内には営業許可証が交付されます。
交付予定日には「営業許可証交付予定日」のお知らせと認印を用意して、保健所にて交付を受けましょう。
⑥キッチンカーの中に許可証を提示
営業許可証はキッチンカー内に提示しておきましょう。
これでようやく営業が開始できます。
営業許可を取得する際の注意点・ポイント
営業許可を取得するにあたって、特に注意すべきポイントがあります。
必ず事前に保健所へ相談する
まずは保健所に事前相談することが大切です。
何度もお伝えしているとおり、営業許可のチェック項目や基準は各保健所によって異なり、不備があれば改造のやり直しなど余計なコストがかかってしまいます。
「キッチンカーを製作し終わってから条件を満たしていないことに気づいた」なんてことがないように、必ず事前に相談するようにしましょう。
営業許可はキッチンカーの台数分必要
複数台のキッチンカーで営業をお考えの方は注意が必要です。
キッチンカー1台につき1つの営業許可証を申請・取得しなければならないからです。
たとえば、3台のキッチンカーでカレー販売する場合は、それぞれのキッチンカーごとに計3つの営業許可証が必要になります。
許可の取得には「食品衛生責任者」の資格も必要
営業許可を得るためには食品衛生責任者の資格も必要になります。
食品衛生責任者とは「飲食店で作られた食べ物に対する責任者」のことで、食品を扱うお店を営業するには、その施設に1名以上の食品衛生責任者を置かなければならないという決まりがあります。
食品衛生責任者の資格は、全国で保健所が行う講習会を受講すれば取得でき、講習時間は約6時間、受講料は10,000円程度です。(各都道府県によって異なります)
また、調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格保有者は講習会と受講料が免除され、申請だけで食品衛生責任者の資格を取得できます。
どこで営業するか決定するとコスパ◎
キッチンカーで「全国各地を旅しながら営業したい!」と考えている方もいるでしょう。
しかし、日本全国で営業許可をとるのは残念ながら現実的ではありません。
理由は下記です。
- 全国に数十箇所ある保健所すべてに出向く必要性
- 保健所の基準は地域ごとに異なるため、改造しないと検査に通過しない可能性がある
- 営業許可の手数料だけでかなりの高額になる(日本全国で取得するとなると数十万円)
まず最初に「どの地域で営業するか」を決めてから、開業準備・キッチンカーの製作をスタートさせましょう。
自分の居住地域+大きなイベントのある地域(東京など)で営業許可を取得するのが最もコスパ◎です。
代行業者を使うのもおすすめ
キッチンカーの営業許可取得の際に、代行業者にサポートしてもらうこともおすすめです。
審査の通りやすさ、審査に通るまでの時間短縮というメリットがあるからです。
ここだけの話、飲食業やキッチンカーの未経験者に対して保健所は審査をより厳しくする傾向があります。
食中毒のリスクを最小限にするため・未経験者への教育を徹底するために、なかなか許可が下りないこともあるようです。
その点、食中毒を出さない営業方針・設備について保健所に説明できる経験者がいれば、保健所側も許可を出しやすくなります。
初めてのキッチンカー開業であれば、保健所の申請に強い製作会社に代行させることもご検討ください。
出店場所によっては道路使用許可も必要
路上・公園など出店場所によっては道路使用許可が必要になる場合があります。
営業許可がおりたからといって、その地域の道路上でも営業できるわけではないということです。
たとえば、路上で営業したい場合には警察から「道路使用許可(3号許可)」を取得しなければなりません。
許可なく路上で販売行為をしてしまうと、道路交通法により「道路の不正使用」とみなされます。
移動命令に応じない場合は駐車違反の反則金が課されます。
また、公園で営業したい場合には国土交通省からの許可を別途取得する必要があります。
人通りが多い場所とはいえ、道路上や公園で営業するのはなかなか難しいと考えておいた方が良いでしょう。
MYキッチンカーなら営業許可の申請から取得まですべてサポート!
MYキッチンカーはキッチンカー製作だけでなく、面倒な営業許可の申請から取得まですべてサポートさせて頂きます!
営業許可の申請は個人で行えますが、保健所の申請基準は地域ごとに異なるため、初めての方はもちろん以前営業許可が下りた方も別の地域で許可が下りるかどうかはわかりません。
MYキッチンカーでは、営業許可をとれる設計を熟知した設計士が多数在籍しており、そのノウハウを活かした保健所申請のコツやテクニックのアドバイスを行っています。
「キッチンカーを始めたいけど保健所の営業許可が下りるか不安」という方は、ぜひMYキッチンカーにご相談ください!
まとめ
飲食業の新しいビジネスモデルとして注目を浴びているキッチンカーですが、営業許可関連の手続きが複雑であることは否めません。
事実、「条件の確認不足による設備の不備・資格の取得忘れなどで開業計画に遅れが出てしまった」という話もよく耳にします。
そうならないためにも、事前に必要事項をしっかり確認したうえでメニュー考案・キッチンカー製作に進んでいただけたらと思います。
キッチンカー開業についてもっと知りたい方はこちらの記事もお読みください。