近年、移動薬局(モバイルファーマシー)は、災害時にも薬剤師が調剤できる車両として注目を集めており、新たな移動型車両として今後需要が高まる可能性があります。
しかし、医療関係の仕事をしている方以外に移動薬局について、詳細や実例などを知らない方が多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、移動薬局の役割や活用事例について紹介します。
また、平時の実証例についても詳しく解説するので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
移動薬局(モバイルファーマシー)の役割とは?どこで活躍する?
移動薬局は、医療設備の整っていない環境でも薬剤師による調剤を可能とした移動車両で、災害が起きた被災地でも人々の健康を守ることが可能です。
この章では、移動薬局の役割について解説します。
移動薬局はどこでも医薬品を調剤できる供給車両
移動薬局は、調剤を行う設備が整った災害対策医薬品供給車両で、改造したトラックの車内には調剤台や医薬品棚、小型分包機や薬品保管庫など調剤室の基本的な機能が備わっています。
他にもさまざまな機能が備わっており、具体例は以下の通りです。
- バッテリー
- 発電機
- 通信衛星アンテナ
- 給水タンク
- カーナビ
- ETC
- 冷暖房
- 温水ボイラー
- 水洗トイレ
- 簡易ベッド
上記のような機能が備わっているので、医療が行き届かない被災地でも供給が可能で、現地活動が長期化しても柔軟に対応できます。
被災地で大きな活躍が期待されている!
先述の通り、移動薬局にはさまざまな機能が備わっているため、被災地で大きな活躍を期待できます。
ライフラインが途絶えた被災地でも医薬品の調剤や健康相談、医療従事者の活動拠点としての役割が可能です。
このことから、移動薬局は、病院に行けない人にとって重要な存在だと言えるでしょう。
災害時における移動薬局の活用事例を紹介
災害時、移動薬局はどのように活用されているのかを事例別に紹介します。
西日本豪雨 広島県呉市
平成30年7月に西日本豪雨が発生し、広島県呉市は土砂崩れで周囲から隔絶されました。
そこに移動薬局がフェリーで運び込まれ、1か月間被災者に対して以下のような支援を行いました。
- 被災地の情報収集
- 調剤
- セルフメディケーション支援
- 避難所の衛生管理
はじめは数名の薬剤師が対応していましたが、徐々に人数が増え最終的には数百名の薬剤師が派遣され、連携を取りながら被災地を支援しました。
熊本地震
東日本大震災では医薬品供給体制が壊れ、医薬品を供給できない事態が発生したことをきっかけとして、移動薬局が発案されます。
そして、平成28年4月に熊本地震の被災地で初めて活用され外傷や慢性疾患薬、抗不安薬や睡眠薬などの医薬品の提供や調剤業務を行いました。
また、上記の活動だけではなく服薬指導や健康相談、環境衛生の維持向上などの活動も行い被災地を支援しました。
移動薬局が抱える課題
移動薬局は、上記の事例で多くの人々の健康を守り、被災地での役割を果たしました。
しかし、活躍した反面いくつかの課題も浮き彫りとなり、まだ広くは活用されていません。
移動薬局がどのような課題を抱えているのか、以下の章で解説します。
導入・設備維持に費用がかかる
移動薬局は病院に通えない人々に対して直接、調剤などの支援をすることができますが、現在全国的な導入数は多くありません。
理由の1つとして挙げられるのは、導入や設備維持に以下のような費用がかかることです。
- 車両本体
- メンテナンス
- 医薬品の購入
- 通信機器の月額利用料
さまざまな場所で移動薬局を利用できると心強いですが、高額なコストを理由に導入が難しい状況です。
しかし、ここ数年で少しずつ導入数は増えてきているので、この先移動薬局を見かける機会が増えるかもしれません。
災害時以外での活躍の少なさ
現状災害時以外で、移動薬局は活躍の場面が少ない車両です。
そのため認知度が低く、多くの方が移動薬局の存在を知りません。
災害訓練や広報活動などで移動薬局の認知を広めて、移動薬局の有用性について多くの方に知ってもらうことで、導入数を増やす必要があるでしょう。
平時での移動薬局の実証実験
上記の課題を解決するため、平時における移動薬局の実証実験が行われており、この章ではいくつかの事例を紹介します。
【過疎地での実証実験】岐阜薬科大(岐阜市)
令和4年10月から岐阜薬科大で、岐阜県山県市の山間部の過疎地を対象とした実証実験が行われています。
実験が行われた伊自良北診療所では薬局から距離があり、医師が薬剤師法と医師法の例外規定によって調剤していました。
そこで、診療所の駐車場に移動薬局を置くことで、医師は本来の仕事である診療に専念できるようになり、大きな効果が得られました。
また、薬剤師が患者と対面して薬の説明や健康状態の確認を行うので、患者の小さな異変により気づきやすくなる効果も得られたのです。
【民間企業で導入】アイ薬局(岡山)
岡山県にあるアイ薬局では、民間企業で初となる移動薬局の導入が進められました。
過去に発生した災害での移動薬局の活用をきっかけに導入され、今後災害が発生したときに、薬剤師が人々を救えるように準備しています。
また、民間企業が初めて取り入れたことから、移動薬局の認知拡大にもつながりました。
移動薬局の需要が高い場所はどこ?
移動薬局の需要が高い場所について詳しく紹介します。
医療的過疎地
近隣に病院や薬局が少なく困っている人が多い傾向にある医療的過疎地は、移動薬局の需要が高いと言えるでしょう。
移動薬局を導入することで、病状の悪化や体調不良に気づきやすくなったり、薬を貰うだけではなく薬剤師から直接説明を受けられたりできる点も、大きなメリットです。
このことから移動薬局は、医療的過疎地に暮らす人々にとって心強い存在と言えます。
高齢者が多い地域
高齢者が多い地域は、移動薬局の需要が高い傾向にあります。
外出が難しかったり、自宅からの距離が遠かったりすると、高齢者にとって病院や薬局まで出向くのが困難であるためです。
そこで、移動薬局があると高齢者に直接薬を届けられ、薬を調剤すると同時に体調の確認や相談を受けることが可能です。
また、薬剤師と対面で話せることから、高齢者は安心して薬を受け取れるでしょう。
フェリーで上陸できる島
島に病院や薬局がなくフェリーで通院している人々がいる地域は、移動薬局の需要が高いと言えるでしょう。
体調がすぐれないときにフェリーや船で通うのは、体に負担がかかるため直接薬を届けてくれる移動薬局は、島民にとって心強い存在となります。
平時でも今後の活躍が期待される移動薬局
移動薬局は災害時を想定して作られましたが、さまざまな場面で活用することが可能であることが実証されたため、平時でも活躍が期待されています。
また、平時での活用が広まると、薬の受取に困っている多くの人々をよりサポートでき、負担軽減や早期治療につながるでしょう。
病気は健康だけではなく命に関わる恐れがあるため、移動薬局が広まることで、多くの人々の健康を守ることが期待されています。
移動薬局の車両に関するご相談はMYキッチンカーへ!
移動薬局は現在、法律で災害時のみ利用が認められていますが、平時でのさらなる活躍によって、そのニーズが高まっていくと見られています。
しかし医薬品供給車両として、一般的な移動店舗車両とは設備などが大きく異なる移動薬局は、車両についての悩みや不安が尽きないのではないでしょうか。
MYキッチンカーでは、長年移動型車両を取り扱ってきた経験や実績を活かして、車両に関する無料相談を行なっています。
お客様の悩みや相談を踏まえた意見を基に、全国どこでも車両の製作やリースを承っていますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
本記事では、移動薬局(モバイルファーマシー)について紹介しました。
移動薬局はトラックを改造して、薬剤師が現地で直接調剤できる車両であり、過去に災害現場で活躍しておりますが、費用面や災害時以外の活用について課題があります。
しかし、平時の実証実験での運用を経て今後の活躍が期待されており、将来的に移動薬局を見かけることが増えるかもしれません。